ヘウレーカ/岩明均

ヘウレーカ ヘウレーカ
岩明 均 (2002/12/19)
白泉社

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 古代ローマ時代のシラクサ(現在のシチリア島)を舞台に、アルキメデスの弟子であるダミッポスとローマ人でシラクサに生まれたクラウディアを中心に、市民の視点から戦争を描く。
 なんて、硬い口上はどうでもよくて、これは悲恋ということでイチオシ!

 シラクサを愛するクラウディアは同胞ローマとシラクサが戦争になったことで、これまでの生活を奪われそうになる。ダミッポスは、彼女は助けようとするのだが……。
 この作品の素晴らしいところは1つに、古代のシチリアやポエニ戦争の描写がイキイキして、見てきたように描かれていることだ。まさに、岩明均、見てきたように嘘を描き
 もう1つ、最後の最後で心を捕まれたのが、助けたい、守りたいと願う命のはかなさ。
 あれほど鮮やかで、ついさっきまで存在していたものが、大きな流れの前に一瞬で奪われる残酷さ。「なぜ…」「どうして」と読者まで呟かずにはいられない、諦められない気持ち。
 これが、戦争なのだ、と思い知らされる。

 第一話に出てくるハンニバル(レクターではない)の顔の怖さも、スゴイよ。
 岩明均の一連のローマものを持って、海外漫画市場に地中海を巻き込んで欲しいものである。

オートフォーカス/六本木綾

オート・フォーカス 5 (5) オート・フォーカス 5 (5)
六本木 綾 (2004/02/05)
白泉社

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 かつで少女漫画といえば、特有の「せつなさ」があった。実際に触れたら消えてしまうような、思春期の「せつなさ」。最近は、ストレートに「好き好き!愛してる!」という表現が目立つように思うが、むろんそっちも大好きだが、レトロな少女漫画の良さを残している少女漫画家が、六本木綾だ。

 なかでも「オートフォーカス」は、せつなさ1番恋愛2番。典型的な三角関係ものだが、それがイイ!
 主人公の幼なじみで、地味だが危険な性格、番犬のような学と、良心の再婚によって義弟になった陸。この2人が対照的で非常に良い。
 まあ、筋はよくあるものなのだが、この作品の良さは、「せつなさ」にある。

 誰か1人を選ぶということが意味する子どもからの卒業。なのに、一緒の心を通わせた記憶だけは、温かく、主人公を迷わせる。1人ぼっちのときに繋いだ手の存在感は、宇宙に自分たちしかいないのではないかと思わせるほど、しっかりとしていた。
 なのに、大人になると、自分たちが子どもでは居られないことを自覚させられる。
 繋いだ手を放さなければ、記憶すら色あせる。
 そのことを先に気づいたのは、学の方だった。

 そう、私は報われない男好き。
 でも、陸もかっこいいし、こういうタイプが世界を拡げるんだと思うな。

 懐かしい学生時代を思い出したい貴女に(笑)。

ナイルのほとりの物語/長岡良子

ナイルのほとりの物語 (11) ナイルのほとりの物語 (11)
長岡 良子 (1998/07)
秋田書店

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 古代浪漫を描かせれば、希代の名手・長岡良子のエジプトシリーズである。
 基本読み切りで、ときどき1冊まるごと1つの作品になっている。最終巻が少し宗教っぽくなったのだけが残念だが、古代への幻想をかき立てられることは間違いない。エジプトものといえば、私は、これと「ファラオの墓」を推す。
 一番好きな話と人を紹介しよう。

 一番好きな話は「メンネフェルからの手紙」である。
 ハトシェプスト女王とトトメス3世の時代(紀元前15世紀頃)。トトメス3世はハトシェプスト女王の実子ではなく、側室の子どもなのだが、その側室であった母の秘められた過去の物語だ。
 実母シシィを殺したとしてハトシェプスト女王を恨むトトメス3世だったが、そこへ女王の側近で、彼も知っている男から手紙が届く。その手紙には母の死にまつわる真実が書かれていた。
 シシィの死体をかき抱く彼の最後の言葉が堪らない。大きな歴史の流れに巻き込まれた幼い恋人同士の静かな悲しみが聞こえてくるような作品だ。
 今、思い出しても泣け(ry

 このシリーズのなかには「黄金の地平」という作品があり、「世界ふしぎ発見!」でも何度か紹介されている、抹殺された王アメンホテプ4世の物語に触れている。理想の国造りをしようとした彼は、信頼できる側近と力を合わせようとするが、心の病が王をむしばみ… という展開。その側近の1人ホレムヘブ(将軍、のちにファラオ)が、理想を打ち砕かれたときに叫ぶ言葉が好きだ。
 軍人だからこそ、現実がいかに汚いものかを知っている彼は、それゆえに誰よりも理想を求めていた。アメンホテプ4世の理想を実現したかった。だが、現実は理想論で行くほど甘くない。彼は苦渋の決断をし、自分が実権を握る。王と国民を守るために。

 このシリーズには「希求」という言葉がぴったりくる。太古から続く歴史のなかで、人間はなにに餓え、なにを求めているのか。
 たまらなく人間の営みが愛おしくなってくる。

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  • Author:明
  • 年期の入ったヲタ。漫画中毒。立てばたぬぞう座ればチョコボ、歩く姿はアラレちゃん。
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